共同親権と単独親権の違いは?
― 2026年の改正民法での決め方と、選べないとき
そもそも親権とは何ですか?
親権とは、子どもの面倒をみたり、子どもの財産を管理したりする権利と義務のことです。法務省は親権を「こどもの面倒をみたり、こどもの財産を管理したりすること」と説明し、親権は子どもの利益のために行使しなければならないとしています。
親権は「親の権利」という言葉の形をしていますが、実際には子どものために果たす役目という性格が強いものです。誰が親権者かによって、進学先や住む場所などを最終的に誰が決めるのかが変わります(出典:法務省民事局「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」(2026年1月改訂))。
共同親権と単独親権は、何が違うのですか?
違いは「親権者が父母2人ともか、どちらか1人か」です。共同親権では、子どもの転居や進学先といった重要なことを父母が共同して決めます。単独親権では、親権者になった側が1人で決めます。
| 比べる点 | 共同親権 | 単独親権 |
|---|---|---|
| 親権者 | 父母の2人とも | 父母のどちらか1人 |
| 重要なことの決め方 (転居・進学先など) | 父母が共同して決める | 親権者が1人で決める |
| 日常のことの決め方 (食事・服装・習い事など) | 父母の一方が単独で決められる | 親権者が1人で決める |
| 急ぎのとき | 子どもの利益のため急迫の事情があるときは、一方が単独で決められる | 親権者が1人で決める |
| 意見が対立したとき | 特定の事柄について、家庭裁判所が父母の一方を「親権行使者」に指定できる | 親権者が決める(親権行使者を指定する手続はない) |
| 2026年3月31日まで | 離婚後は選べなかった | 離婚後はこの形しかなかった |
2026年3月31日までの民法では、「離婚後は、父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした」(法務省民事局)。2026年4月1日施行の改正で、離婚後に共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになりました。改正民法の全体像は、2026年の改正民法で共同養育はどう変わるにまとめています。
離婚後の親権者は、どうやって決めるのですか?
協議離婚では、父母の話し合い(協議)で、親権者を父母双方とするか一方とするかを決めます。話し合いがまとまらない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が決めます。家庭裁判所は、父母と子どもの関係や父と母の関係などの様々な事情を考慮し、子どもの利益の観点から判断します。
| どんな離婚か | 親権者を決めるのは誰か |
|---|---|
| 協議離婚(話し合いで離婚する) | 父母が協議して、父母双方とするか一方とするかを定める |
| 協議が調わない/裁判離婚 | 家庭裁判所が、子どもの利益の観点から定める |
家庭裁判所での手続では、裁判所は父母それぞれから意見を聴かなければならず、子どもの意思を把握するよう努めなければならないとされています。裁判所は判断にあたって「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮」するとしています(出典:裁判所「離婚後の親権者の定めに関する手続等」)。
また、離婚そのものは話し合いがついていて、親権者だけが決まらない場合には、親権者指定の調停・審判という手続があります。裁判所はこの手続を「離婚自体は協議が調っており協議離婚の届出をすることが可能である場合に利用できる手続です」と説明しています。
共同親権が選べないのは、どんなときですか?
虐待のおそれがあると認められるとき、DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときは、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをします。この2つは、法務省が「必ず単独親権の定めをすることとされている」場合として明記しているものです。
- 虐待のおそれがあると認められるとき
- DVのおそれその他の事情により、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
法務省は「殴る・蹴る等の身体的な暴力を伴う虐待・DVに限定されません」と注記しています。さらに、この2つに当てはまらない場合でも、共同親権と定めることで子どもの利益を害すると認められるときは、裁判所は必ず単独親権の定めをするとされています(出典:法務省民事局)。
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共同親権になると、子どものことは全部2人で決めるのですか?
いいえ。「監護教育に関する日常の行為」は、父母の一方が単独で決められます。日常の行為とは、法務省の説明では「日々の生活の中で生ずる監護教育に関する行為で、こどもに重大な影響を与えないもの」です。一方、子どもの転居や進学先の決定などは日常の行為に当たらず、共同で行使します。
| 日常の行為に当たる例(単独で決められる) | 日常の行為に当たらない例(共同で決める) |
|---|---|
|
・食事や服装の決定 ・短期間の観光目的での旅行 ・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定 ・通常のワクチンの接種 ・習い事 ・高校生の放課後のアルバイトの許可 |
・子どもの転居 ・進路に影響する進学先の決定(高校に進学せずに就職するなどの判断を含む) ・心身に重大な影響を与える医療行為の決定 ・財産の管理(預金口座の開設など) |
急いで決めなければならないとき(急迫の事情)
子どもの利益のため急迫の事情があるときは、日常の行為に当たらないことでも、父母の一方が単独で親権を行使できます。法務省は「父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては親権の行使が間に合わず、こどもの利益を害するおそれがある場合」と説明し、例として次を挙げています。
- DVや虐待からの避難(子どもの転居などを含む)をする必要がある場合(法務省は「被害直後に限りません」と注記しています)
- 子どもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
- 入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っているような場合
意見が対立して決まらないとき(親権行使者の指定)
父母が共同して決めるべき事柄について意見が対立するときは、家庭裁判所が、父または母の請求により、父母の一方をその事柄の「親権行使者」に指定することができます。指定された親は、その事柄について単独で親権を行使できます。法務省は対象の例として「急迫の事情があるとはいえない場面におけるこどもの転居や財産管理など」を挙げています。裁判所側にも、改正にあわせて親権行使者の指定調停という手続が設けられています(出典:裁判所「離婚と子どもをめぐる新しいルールについて」)。
なお法務省は、未成年者のパスポートの申請の際には親権者の同意が必要になると案内しています。詳細は各都道府県のパスポートセンターや在外公館への問い合わせが必要です。
共同親権になると、子どもと一緒に暮らすのはどちらの親ですか?
親権者を父母双方とした場合でも、その一方を「監護者」と定めることで、子どもの監護(世話をして育てること)をその一方に委ねることができます。監護者と定められた親は、日常の行為に限らず、子どもの監護教育や居所・職業の決定を単独ですることができます。
法務省は、監護者でない親権者について「監護者がこどもの監護をすることを妨害してはなりませんが、監護者による監護等を妨害しない範囲であれば、親子交流の機会などに、こどもの監護をすることができます」としています。
また、父母が離婚するときは、監護の分担についての定めをすることもできます。法務省が挙げている例は次のとおりです(定めるにあたっては、子どもの利益を最も優先して考慮しなければならないとされています)。
- 平日は父母の一方が子どもの監護を担当し、土日祝日は他方が担当するといった定め
- 父母が週ごとに交互に子どもを監護するといった定め
- 子どもの教育に関する決定は一方の親に委ねるが、その他の重要な事項は父母が話し合って決めるとする定め
裁判所には、改正にあわせて監護の分掌(ぶんしょう)調停という手続も設けられています。実際の面会の頻度やルールをどう決めるかは、面会交流の頻度・ルールの決め方で整理しています。
すでに離婚している場合、あとから親権を変えられますか?
改正法の施行によって、すでに単独親権になっている家庭が自動的に共同親権に変わることはありません。変えるには、家庭裁判所の調停または審判が必要です。裁判所は「離婚後の親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停又は審判によって行う必要があります」としています。
法務省は、改正前に離婚して単独親権の定めをしている場合について、「今回の改正法の施行によって自動的に共同親権に変更されることはありません」と明記しています。そのうえで、施行後に家庭裁判所が、子ども自身やその親族の申立てに基づき、子どもの利益のための必要性を踏まえて、親権者を単独親権から共同親権に変更する場合がありますとしています。
どのような場合に変更が認められるかはケースバイケースですが、法務省は次の点を挙げています。
- 養育費の支払義務を負う親が、本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたり合理的な理由なく怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられる。
- 虐待やDVのおそれがあるときや、父母が共同して親権を行うことが困難であるときは、共同親権への変更は認められない。
親権者の変更は、父母の一方から他の一方へ、一方から双方へ、双方から一方へ、いずれの方向でも申し立てることができます。法務省は「離婚前の父母間に一方からの暴力等があり、対等な立場での合意形成が困難であったといったケース」について、この手続によって親権者の定めを是正することができる、と説明しています。
| 親権者変更調停の手続 | 内容 |
|---|---|
| 申立てができる人 | 子またはその親族(一般的には父または母) |
| 申立て先 | 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
| 収入印紙 | 子ども1人につき1200円分 |
| 郵便切手 | 郵便料は裁判所ごとに異なる(申立て先の家庭裁判所に確認が必要) |
| 考慮される事情 | 変更を希望する事情、現在の親権者の意向、今までの養育状況、双方の経済力や家庭環境、子どもの性格・就学の有無・生活環境など |
親権が決まったあと、日々の共同養育で大切なことは?
共同親権でも単独親権でも、離れて暮らす親と子どもの関わりを続けるうえで大切なのは、「決めたことを記録に残す」ことと「連絡そのものの負担を減らす」ことです。親権の形は、日々の面会や養育費のやり取りを自動的に整えてくれるわけではありません。
共同親権を選んだ場合は、転居や進学先など共同で決める事柄が実際に出てきます。単独親権の場合も、面会交流や養育費のやり取りは続きます。どちらの形でも、次の3つを意識すると「言った・言わない」を防ぎやすくなります。
- 面会や養育費の取り決めを文書に残す。
- 面会の実施や養育費の支払いをそのつど記録しておく。
- 相手との連絡のやり取りそのものの負担を減らす(気をつかう連絡が続くと、共同養育が途切れやすくなります)。
共同養育アプリ「はぐみぃ」は、面会の日程調整と養育費の記録を、電話番号やLINEを交換せずにアプリの中だけで共有できるように作られています。相手と直接やり取りしたくない事情がある場合の進め方は、元パートナーと連絡を取りたくないときの共同養育の進め方でまとめています。
迷ったときは、どこに相談すればいいですか?
自分の家庭でどちらを選ぶべきかは、法律の条文だけでは決められません。弁護士・家庭裁判所・法テラスなどの専門の窓口に相談してください。とくに虐待やDVの心配がある場合は、共同親権を選べるかどうかの判断そのものに関わるため、早い段階で相談することが大切です。
- 家庭裁判所:親権者指定・親権者変更の調停や審判の手続を扱います(裁判所「離婚と子どもをめぐる新しいルールについて」)。
- 法テラス(日本司法支援センター):法的なトラブルの相談窓口の案内などを行う国の機関です(法テラス公式サイト)。
- 弁護士:個別の事情に応じた見通しや、相手との交渉・手続の代理を依頼できます。
- DV相談ナビ「#8008」/児童相談所虐待対応ダイヤル「189」:安全に関わる心配があるときの相談先です。
制度の全体像は、法務省「民法等の一部を改正する法律について」や、法務省のQ&A形式の解説資料(民法編)でも確認できます。
よくある質問
共同親権と単独親権は、何が違うのですか?
親権者が父母2人ともなのか、どちらか1人なのかが違います。共同親権では、子どもの進学先や転居といった重要なことを父母が共同して決めます。単独親権では、親権者になった側が1人で決めます。2026年4月1日施行の改正民法により、離婚後はどちらの形も選べるようになりました。それ以前の民法では、離婚後は父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした(出典:法務省民事局)。
離婚後は必ず共同親権になるのですか?
いいえ。共同親権か単独親権かを選びます。協議離婚では父母の話し合いで決め、話し合いがまとまらない場合や裁判離婚では、家庭裁判所が父母と子どもの関係や父と母の関係などの事情を考慮して、子どもの利益の観点から決めます。虐待のおそれがあると認められるとき、DVのおそれその他の事情で父母が共同して親権を行うことが困難と認められるときは、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをします(出典:法務省民事局)。
共同親権になると、子どものことは全部2人で決めるのですか?
いいえ。監護教育に関する日常の行為は、父母の一方が単独で決められます。法務省は日常の行為の例として、食事や服装の決定、短期間の観光目的での旅行、通常のワクチンの接種、習い事、高校生の放課後のアルバイトの許可などを挙げています。一方、子どもの転居や進路に影響する進学先の決定などは日常の行為に当たらず、共同で行使します。また、子どもの利益のため急迫の事情があるときも単独で親権を行使できます(出典:法務省民事局)。
すでに離婚して単独親権ですが、共同親権に変えられますか?
改正法の施行によって自動的に共同親権に変更されることはありません。ただし施行後に、家庭裁判所が、子ども自身やその親族の申立てに基づき、子どもの利益のための必要性を踏まえて、単独親権から共同親権へ変更する場合があります。虐待やDVのおそれがあるときや、父母が共同して親権を行うことが困難であるときは、共同親権への変更は認められません。離婚後の親権者の変更は、必ず家庭裁判所の調停または審判によって行う必要があります(出典:法務省民事局・裁判所)。
共同親権になると、子どもと一緒に暮らすのはどちらの親ですか?
親権者を父母双方とした場合でも、その一方を「監護者」と定めることで、子どもの監護をその一方に委ねることができます。監護者と定められた親は、日常の行為に限らず、子どもの監護教育や居所・職業の決定を単独ですることができます。また父母が離婚するときは、平日は一方、土日祝日は他方といった監護の分担についての定めをすることもできます(出典:法務省民事局)。
- 法務省民事局「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」(2026年1月改訂):www.moj.go.jp/content/001449160.pdf
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」:www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html
- 法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」:www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00377.html
- 裁判所「離婚後の親権者の定めに関する手続等」:www.courts.go.jp
- 裁判所「親権者変更調停」:www.courts.go.jp
- 裁判所「離婚と子どもをめぐる新しいルールについて」:www.courts.go.jp
- こども家庭庁「ひとり親家庭のためのポータルサイト(民法等の一部を改正する法律について)」:support-hitorioya.cfa.go.jp/revision/
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